リテラシー
ゲノム医療・研究の情報は、誰がどのように発信しているでしょうか。発信された情報は、患者さんや市民の方々にきちんと届いているでしょうか。それらは理解しやすいもので、また、自身の治療や生活に役立てられるような内容でしょうか。
メディアにおける発信に結びつく
プレスリリースについて
新聞・TVやウェブ記事といったメディアからの発信は、科学的根拠に基づいた正しい内容である必要があります。また、大げさな表現や、読み手の不安をあおったり、過度な期待を抱かせたりする内容になることは防がなければなりません。
研究機関や医療機関は、新しい研究成果が出ると、メディアに向けて、その内容を記したプレスリリースを発出します。メディア側は、記事をつくる際にプレスリリースを参考にするなどして、医療・研究についての発信をしています。また、プレスリリースは、多くの場合ウェブで公開されるので、患者・市民の方々も直接見ることができます。
プレスリリースを発出する際に、医療・研究側が気をつけるべきこと、受け取った際にメディア側が気をつけなくてはいけないこと、患者・市民が直接見る際に必要なこと、それぞれの留意すべきことを、このプロジェクトでは考えていきます。
現在、イギリスでは、科学技術広報の関係者の団体Stempra(Science, Technology, Engineering, Medicine Public Relations Association)がプレスリリースの手引書をまとめ、公開しています。ゲノム医療・研究の発信を考える上で、重要と考えられる部分を、一部、紹介します。
※この報告書は数年おきに改訂されており、現状の最新版は2019年に発行されています。なお、2009年版については、科学技術広報研究会により全訳され公開されています。
Stempra – プレスオフィサーのためのガイドブック
Stempra Guide to being a Media Officer
生物医学研究のプレスリリースで注意すべきこと
(13項目のうち4項目を抜粋)
- 研究成果を正確に反映し、大げさな誇張(‘hype’)をしないこと(特にプレスリリースのタイトルと第一パラグラフ)。「画期的な成果(‘breakthrough’)」や「病気が治る(‘cure’)」等のことばは、当該研究者と、できれば第三者が、完全に確信している場合にのみ使用すること。患者に誤った期待を抱かせないよう気をつけること。
- 当該研究の補足や限界を盛り込むこと。例えば、研究の参加者数や、研究者がコントロールできない要素があったかどうか、研究成果の中に直接の測定によってではなく調査等によって得られたものがあったかどうか、等。
- 当該研究で用いたのは細胞株か、動物モデルか(何の動物を用いたか)、ヒト胚か、もしくは人を対象とした研究か、明確にすること。
- 研究の種類を明記すること。例えば、もしそれが臨床試験であるなら、無作為化試験なのか、比較試験なのか、二重盲検試験なのか、第Ⅰ相~第Ⅲ相試験なのか。それとも観察研究なのか。あるいはそれが新規の研究なのか、過去に行われた研究のデータを用いたメタアナリシスなのか、その両方を組み合わせたものなのか。